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ゆり姉に嘘はつけない。バターを塗ったパンに、ハチミツを垂らそうとしていた手を止め、頷こうとしたところで 「今年は副会長だもんなテルは。学校と生徒の信頼を裏切らない歓迎をしてやれ」 義兄さんが助け船をだしてくれた 「はい」 さすが義兄さんだ。今の発言だけで、ぼくが学校行事に参加してる印象を強くするのだから、凄い。嘘を吐いたわけもないし、ゆり姉に決まり悪さは感じない。スプーンでハチミツを瓶からすくい取り、とろとろとパンに垂らし 「あっ はっ あぁん」 ゆり姉の艶めいた声に顔が火照る。もう、聞いてる方が恥ずかしいよ。垂れ流れるハチミツを舌で受け止めながら、パンを食べた 「行ってきます」 玄関をガラガラと横に開け、表に出たら、見慣れた黒い車が近づいてくる 「九鬼さん!」 嬉しい、会えると思ってなかった。九鬼さんは大学の外国語先生で、ドイツとフランスの本の翻訳も頼まれてて、週二回、高校で理化学を教える忙しい人だ。窓を開けた九鬼さんの柔らかな髪が風に揺れる。笑みを浮かべた彼は 「乗れよ」 助手席のドアを内側から開け、誘ってくれるけど 「でも・・・・・・」 躊躇ってしまう
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