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誰か、庭に人がくる前に脱ぎ襦袢を着よう。恥ずかしい場所は義兄さんにしか見られずに済む
トランクスのゴムに指をかけ、目尻を下げる義兄さんに背を向け、一息で足首までおろす。尻を義兄さんに突き出す格好となった時、世間とは無情に出来ているようで、庭の小石を踏む音が近づいてきた
「何をしている!」
うわ、びっくりした。突然の大音声に驚いてしまい、足首から抜こうとしたトランクスのゴムに足指を引っかけ、バランスを崩してしまった。だけど、もっと驚いて飛び上がったのは
「待て九鬼 落ち着け」
義兄さんだ。見る見るうちに顔を青ざめさせる義兄さんを、ドスドス、畳を踏み鳴らし追いかける九鬼さんはまさに、嫉妬に狂う鬼。義兄さんは悲鳴をあげ逃げるがアッという間に襟首を掴まれ、畳の上を引きずられていく
ヤバいヤバい
全裸でひっくり返った状態のぼくはアタフタと、トランクスを履き直し
「テルとまでそういう関係になったのかテメェ!」
九鬼さんに投げ飛ばされた十万円を、いや、義兄さんを救うべく庭へ飛び降りた。体を折り曲げ、幼子のように丸まる義兄さんの肩、腕、指を確認
「良かった・・・・・・」
執筆を妨げる
「傷はなさそう」
バイト代が入ることにホッと息を吐き、考える。細くても、男一人抱える力はぼくにない。書斎へ義兄さんを戻すのを手伝って貰おうと、縁側に立つ九鬼さんを見上げ、ハッと息を飲んだ
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