私と子猫と猫の先生

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まだまだ肌寒い冬だった。その日は会社を出てそのまま食事もせずすぐに自分の部屋に帰った。社内の人間関係に疲れ、辞めようかとも思いながらもそれでもそれでもと続けていたが、今日の会議中の出来事には心底疲れ果てていた。 お風呂に入るのもめんどくさい…と考えながらコートを脱いで、そのコートすらもハンガーにかけるのも面倒で、脱ぎ落してベッドの上に倒れた。 化粧落とさなきゃ…めんどくさいな… 目を瞑りながらそう思った瞬間、窓から呼ぶ声がした。 「ニャー」 「猫!」と顔を上げて窓の方を向くと顔がヒョコッと。目が合った瞬間、もう一度、「ニャー」。 窓を開けるとその猫はそのまま部屋の中に入ってきた。ベッドの横に置いてあるこたつの前まで来て、ベッドの上の私の顔を見ながら「ニャー」。 呆気に取られていた私にこたつの中に入れろと言う。 こたつの中に入った猫を見ると毛繕いを始めていた。こたつを覗き込んだ私に「あら?なによ、文句ある?」 といった感じで一瞥し、また毛繕いを続けた。 ハッと我に返って、よく見てみると随分とお腹が大きい。 あれ?このコ、お腹に子供がいる? どうやら赤ちゃんの生み場所を探していたらしく、この部屋に辿り着いたようだ。猫好きじゃなかったらどうするつもりだったんだ?と思ったが、猫好きな家ということが猫には解っていたのかもしれない。 私の部屋で生むことに決定した様子で、毛繕いが終わった後そのまま寝てしまった。その日はミルクを持って来て置いておき、翌日、仕事を定時で終えて猫用のトイレとご飯を買ってきた。
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