瀬名駿斗1・宣戦布告

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 奇宝館の夜は意外と早い。それというのも、部屋の掃除やセッティングなどの全てを、その部屋を管理するホスト自らが行っているからだ。  クリスもまた、今日のお客を迎えるべく動いていた。暖炉に火を入れて温め、掃除をし、風呂などもいつでも入れるようにと準備をする。セラーからこの日のワインを出しておいて、チーズも小さな皿に少量盛り付ける。  ベッドメイクを終えたあたりで、不意にドアをノックする音がした。 「どなたでしょうか?」  時間は6時を過ぎたくらい。客にもよるが、大抵の人は夜の7時を過ぎたくらいから来る。この時間は早すぎる。  思いドアを開けたクリスは、次に目を丸くして見上げた。これでも181cmという高身長で、日本では見上げるよりも膝を折って視線を合わせる事の方が多い。そんな彼が、この日珍しく相手を見上げたのだ。  目の前には、整った顔立ちの青年が立っていた。  少し長い、濃いめのブラウンの髪に同色の鋭さのある瞳。鼻梁はスッキリと通り、輪郭もスッキリとしている。  ワイルドとも言えるその容姿を呆けて見ていたクリスに、目の前の青年は嬉しそうに笑った。     
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