第1章 霊幻山《れいげんやま》

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「…………」 冷え冷えとする静寂の中、私はこわごわと薄目を開けた。 ヒリヒリと篭もるような痛みが今も体中に反芻している。 ぼんやりとした頭の中で、どうやら足場のない場所へ足を踏み入れ、転落したのだということに気がつく。 腕に力を込め、少しずつ体を起こしていく。 自分の体をおぼつかない手つきで探り、幸い骨が折れていなそうだということは確認できた。 (よかった……。これならなんとか一人で帰れそう) 安堵で大きく息を吐くと、額に滲み出ていた汗が冷たい風と共に徐々に引いていく。 ザリ…… カチャ 風とは違う、固く冷たい感触が私の額に触れた。 え、と思い、ゆっくりと顔を上げると 黒々とした拳銃を手にした、柴色(ふしいろ)の長い髪の男が目の前に立っていた。 「その薄い髪色……。間違いないな」 「まさかこんなに早くお目見えするとは、俺も驚いた」 「……霊幻山に棲む、雪女さん」 ゆっくりと告げた言葉はうわべだけの丁重さだけを纏い、私の心を冷やしていく。 ひき始めたはずの冷たい汗が、またじわりと滲み始めていった。 「俺は狩人(かりうど)。依頼を受けて、お前を退治に来たのさ」 口の端に煙草を加えたまま、男が鼻で薄笑いをする。 耳元を優しくそよぐ風の音が、どこか恐ろしげに聞こえた。
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