第1章 霊幻山《れいげんやま》

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雪代が扉を締める様子を見届けると、これから何をしようかと部屋内を一巡見渡した。 外と同じく、あまり色彩のない内装。 生活に必要な最低限の道具や設備はあるものの、それ以外のものはほとんどない。 部屋の端からパチパチと炎が燃える音が耳に入る。 暖炉の薪が炎と絡まりながら、徐々に侵食されていくのを見ながら、 なんともいえない黒い染みが心に中に広がっていく。 昔から炎が燃えている様を見るのが、苦手だった。 それは私が『雪女』と言われている所以なのか。 (でも私には熱いものに触れられないとか、ましてこの雪山で暖炉なしでなんて生きていくなんてことは出来ないけれど……) 雪代以外の人とあまり接する機会がないからわからないけれど、 見た目が違うと言われているだけで、それ以外は他の人と何ら変わらない ……と思う。 (何か昔、嫌なことでもあったのかしら……?) 以前雪代に聞いたことはあったけれど『深雪はずっとこの地とともに生きてきたから、炎が少し苦手なんだよ。昔大泣きしたこともあるからね』と言われた。 そう言われると確かにそんな気もしたけれど、何か他の理由もあるような気もしていた。 (何故、そう感じてしまうのかしら……) 自分でもよくわからない蟠りを感じながらも、私は一旦暖炉から視線を逸らすと、 思い立ったように食材を集めに出かけることにした。
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