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辺りを闇がすっかり支配し始めた頃、『ただいま』と雪代が帰ってきた。
いつもは陶器のように白い鼻先が、今は寒さからかほんのり赤みを帯びている。
「おかえり。今家にある材料で出来る食事は作っておいたわ」
「あとはここから少し歩いたところに食べられそうな山菜がいくつかあったから、お浸しにしてみたの。シチューと合うかは微妙だけれど・・・・・・」
少し遠慮がちに雪代に勧めてみると、雪代は嬉しそうに笑ってくれた。
「ありがとう。・・・・・・でも、身の回りのことは全部俺に任せてくれていて構わないのに。俺はあなたに仕える立場だから」
「そうはいかないわ。あなたは私の両親に恩があるからと私に仕えてくれるけれど、私ももう一人で身の回りくらいは出来る年齢だもの。いつまでもあなたに甘えているわけにはいかないわ」
「そう? 俺はあなたの世話をするのが、結構好きだけどな」
それに――、と雪代は一旦言葉を区切ると
「なんだか子どもが巣立っていくような感じで、寂しさのような気持ちもあるかな」
と呟いた。
もう、と心の中で膨れそうになるが、今まで雪代に頼りきりが当たり前だったため、子ども扱いされるのは最もだと思う。
反論の余地などなかった。
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