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(いいの。私はこのままで・・・・・・。また何かあったら雪代に迷惑をかけてしまうもの)
いつものようにそう自分を納得させる。
けれど、すぐに頭の中に浮かぶのは、答えの出ない己への問いかけ。
(でも、本当にいいのかしら)
「あ、そうそう」
雪代の声で、ふと顔を上げる。
雪代はゆっくりと席を立つと、荷物の後ろから小さな花束を取り出した。
「これ、深雪に俺からの贈り物」
雪代の腕の中で、赤、紫、白色の小さな花がそれぞれ美しく咲き誇っている。
色のない部屋内の中でそれは一際色鮮やかで、私の瞳を釘付けにした。
「アネモネという花らしいよ。これもここ数年で異国の国からもたらされた花みたいで、深雪が好きそうな花だろうと思って」
「ありがとう。あとで私の部屋に飾らせてもらうわ」
その後もとりとめない会話を続けながら、ひとしきり食事を終えると、それぞれ自室へと戻った。
自室の中に入った私は、雪代からもらったアネモネの花束を
早速窓際に飾ることにした。
「アネモネ。綺麗な花ね……」
静かな室内で凛と佇むアネモネの花。
窓から射す青白い月明かりに照らされ、その花弁は儚くも一層輝きを増していった。
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