1人が本棚に入れています
本棚に追加
外は変わらずの銀一色の世界。
日に照らされた雪は目を刺すような輝きを放っている。
山菜の場所までは歩いてだいたい二十分程かかる。
ここからの道のりは比較的平坦だったけれど、途中少し足場が悪い箇所があったため、転倒しないように気をつけなければいけない。
昨晩は雪が降り続いていたのか、昨日私がつけた足跡は見事に綺麗に消えていた。
新雪を踏む感触は、何回やっても小気味いい。
それはまるで何も書かれていない和紙に、したためた想いを一筆、また一筆と綴っていく感触と似ている。
私はその感触を楽しみながら、しっかりとした足取りで歩を進めていった。
しばらくすると、左手側に村の様子をいくらか見下ろせる場所に辿り着いた。
「ここが少し足場が悪いのよね……。間違って足でも滑らせたら大変」
私は慎重に足を踏み出していく。
問題なくその場を切り抜け、ほっと胸を撫で下ろすと、一息つくかのように村の景色を見下ろした。
家々が豆粒くらいにしか見えないため、村の様子をこの場所から感じ取ることは出来なかったが、なんとなく人々が活発に行き来する、栄えた様子が目に浮かんだ。
(雪代から聞いた村の様子から、そう私が勝手に想像しているだけなのかもしれないけれどね)
自嘲気味に一人笑いながら、また歩いていく。
すると突如、ぞわっと体が浮く変な感触が走った。
あっと思った時は時既に遅く、右足の地面が崩れ、体が地へ深く落ちていく。
視界が上下に回転しながら暗転を繰り返す。
体を打ち付ける鈍い音と共に、声にならない痛みが立て続けに私を襲った。
最初のコメントを投稿しよう!