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第1章 霊幻山《れいげんやま》
赤い。
どこまでも赤い。
目の前にあるのは、全てを覆い、燃やし尽くす灼熱の炎。
大好きだった父。
大好きだった母。
大好きだった兄。
大好きだった、この家。
大切なものが、意図もたやすく灰となり、無残にも果てていく。
――コツ。
ふと後ろを振り返ると、見慣れた『彼』が立っていた。
『彼』は色のない瞳を私に向けていたが、やがて悲しみの色を滲ませ。
「もう大丈夫だから」
そう静かに言って、優しく私を包み込むと、そのまま私をきつく抱き締めた。
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