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口々に朔耶と一緒に居るのは釣り合わないと罵られた。俯いたまま、黙って言われるままになっている薫の様子をじっと見ていた彼女が口を開いたのは、それから暫く経ってからのことだった。
「高山は朔耶くんが好きなんでしょ? 見てたらわかるわ。でも、彼は出来の悪い弟くらいにしか思ってないわよ。だからこれ以上彼に迷惑をかけないで。あんたが居るから仕方なく私の誘いを断らなきゃなくなるんじゃない。私たちの邪魔をしないでよ」
今でも一言一句違えずに思い出せる。
朔耶に淡い想いを抱いていたことを彼女に気付かれていた衝撃は大きかった。誰にも……勿論、朔耶にも告げるつもりのなかった想い。それが見ていたらわかると言われたのだ。
周りに吹聴されることよりも、この想いを知った朔耶に気持ち悪いと否定されることだけが怖かった。
「明日の花火大会、断ってよね。朔耶くんにこれ以上付き纏わないで」
言いたいことだけを薫にぶつけて気の済んだ彼女たちが資料室から出て行った後も、暫くその場から動くことができなかった。
次の日の花火大会は具合が悪いと学校も休み、帰宅した朔耶の見舞いも断ったから、彼女と一緒に観に行ったのかは今でもわからない。
それからは、朔耶を冷たく突き放したりしてみたけれど、なにかと構ってくる朔耶に周りの方が諦めたのだろう、高校を卒業するころには嫌がらせを受けることもなくなっていた。
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