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ロマンスは炬燵から始まる
寒さの厳しくなってきた12月半ばの土曜日。
休日出勤を終えた高山薫が帰宅すると、広いリビングの真ん中にあったローテーブルとソファーが姿を消していた。
代わりにそこに鎮座していたのは小さな炬燵。お約束のように、天板の上には篭盛の蜜柑が載っている。蜜柑の山の陰からは、これの犯人のものである亜麻色の髪の毛が覗いていた。
玄関にきちんと揃えられたスニーカーを見つけていたからまた勝手に部屋に入っていたことには気づいていたけれど、模様替えまでされているとは予想外過ぎて咄嗟に言葉も出ない。
インテリアに拘って、何件もの店を回って探し出したお気に入りのソファーとローテーブルはどこにいったんだろうかと部屋を見回せば、キッチンとの境界にあるカウンターにぴったりと寄せて置かれてあった。
自室の様変わりした様子に固まっていた薫の口から、思わず安堵の吐息が零れ落ちる。
その音で目覚めたのだろう、天板に頬をつけて転寝をしていた朔耶が「あ、薫ぅ~おかえりぃ」と眠気を纏った気怠げな様子で顔を上げた。
無造作に長い前髪を掻き上げながら躰を起こした朔耶が、リビングの入り口から動けずにいる薫を見てにやりと笑う。
この朔耶――二階堂朔耶という男は、突拍子もないことをしれっとやらかすところがあって、幼い頃から散々振り回されてきた薫だった。
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