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「レンタルライフサービス――それは、文字通り“他人の人生をレンタルして体験するサービス”でございます」
「他人の……人生を?――」
昨夜の出来事で、多少のことは覚悟して来たつもりだった昌太郎だったが、本当に現実でこんなことができる場所があるというのを受け止めるには、あまりに衝撃の強いものだった。そして、そんな中でも男の説明は依然続く。
「お客様が先日ご利用されたサービスは、人気アイドル七星未来の体験版でございますが、正式なレンタルライフをご利用されますと、あらゆる人間のあらゆる時間の長さを、当店のシステムに乗っ取り、施行することが可能です」
淡々と、人間味のない笑顔でそう説明しながら、こつこつと男はとある場所へ歩いていくと、数ある冊子の1つを手に取って、それを昌太郎の前に差し出した。
「こ……れは………」
驚く昌太郎の目に映ったのは、分厚い冊子に刻まれたそのタイトルだった。
『mirai nanahoshi』
「お客様がお求めの商品は、こちらでお間違いなかったでしょうか?」
何か、おぞましいオーラのようなものが、その冊子からあふれ出しているような気がして、ぞっとする昌太郎だったが、そのとき脳内に浮かんでいたのは、不思議なことに昨夜自分が七星未来としてステージに上がった……あの快感の味だった。
そして、昌太郎はその冊子を手に取ってしまったのだ。
黒服の男とは対照的に、人間味のある嫌な笑みを浮かべると、少年は気に掛かっていたあることを最後に口にした。
「……ちなみに、このレンタルライフを利用する場合は、一体どれだけのお金が必要なんですか?」
その言葉を聞き、男はにやりと不敵な笑みを1つ浮かべると静かな口調でゆっくりとこう口にした――。
「いえ、このサービスにお金は全く必要ありません――。
必要なのは、【あなたの人生を売ってもらうこと】……ただそれだけです」
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