第1章 全ての始まり

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夏の日差しが容赦なく照りつけ、最高気温が日を増すごとに更新するほどの暑い夏の日――その中でも、ひときわ大きな熱気を放っている場所が存在した。 【国民的人気アイドル七星未来】チケット一枚にオークションで倍近くの値段がつくほどの大型ライブが、今まさにこの場所で行われていたのだった。 「輝く明日を~♪ 煌かせて飛んでいくよ~走れ~~♪」 七星未来が歌うのに合わせて、会場中が一体となり、特大のコールを叫ぶファンの群集の中で……ポツリと1人の男性がそのとき、豆粒のような声量である言葉を漏らしたのだった。 「今…………歌詞間違えたな」 それは、ほんの些細な歌詞の間違い……普通ならば気付くこともないようなことだったが、超がつくほどの熱狂的なファンであるこの少年、前田昌太郎は今まで幾度も参加してきたライブの中でこのような歌詞間違いが起きたことが初めてだったこともあり、思わず驚いた拍子に声に出してしまっていたのだった。 とはいえ、流石の昌太郎もその程度のことを当然それ以上気にするのも馬鹿らしいため、周りのファンと同じようにその後はライブを最後まで楽しみつくしたのだった。 「皆さ~ん! 今日は暑い中私の為に来てくれてありがとう~~♪」 そして、何万人もの大歓声に包まれる中、ライブは大盛況のうちに幕を下ろした。 「あ~……今日も最高だったなーみらいたん可愛すぎたぜっ」 ライブ客で溢れかえった満員電車の中、そう呟いて満足げな笑みを浮かべた前田昌太郎は、手元の大量のグッズを横目に、ついさっきまでのライブの余韻を一人浸っているのだった。 これまで、北海道であろうと沖縄であろうと必ず七星未来のライブに欠かさず行っていた昌太郎は、当然この日もライブに出向いていたのだが、ふとそのとき……自分と同じライブ客の、小太りで眼鏡を掛けた気持ち悪いオタクがにやけているのが目に入った。 (ああ……こいつも俺と同じようにライブの余韻に浸ってんのか。なんか…すげぇ嫌だな)
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