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昌太郎は、自分も傍から見たらこいつと同じきもオタの一人なのか――と思えてしまい、何となく少し暗い気持ちで電車を降りたのだった。なざなら、熱狂的な七星未来のファンとはいえ、自分のことをきもい所謂一般的なアイドルオタクとは昌太郎はこれっぽっちも思っていなかったからである。
そうして、すっかり暗くなった駅から家へと向かう夜の道のりで、そんな昌太郎は歩きながらふとあることを思った。
これは至極当然なのだが……もはや、今の自分と比べてみて同じ人間とは思えない誰の目から見ても特別な存在の大人気アイドル七星未来。さぞ、日々の生活も自分のような底辺の存在とは何もかもが違うのだろうと思う。じゃあもし……自分がそんな存在になれるとしたら――あんな神に選ばれたような人間として人生を過ごすことができたとしたら、一体どんな気分になれるんだろうなーと。
特に大した意味もなく、そんな非現実的なことを頭の片隅で物思いに耽りながら、そのうちに家へ辿り着くと、家の扉の郵便受けからそのとき、一枚の封筒が地面に落ちたのだった。
「……ん? 何だこれ」
その見慣れない黒い手紙を拾い上げて手に取り、中を開けてみるとそこには……
「おぉっ! 未来ちゃんの生写真じゃん~!!」
さっきちょうど見てきたばかりの七星未来のライブ写真がそこには入っていた。
「ああ……これファンクラブの特典だな! ラッキー♪」
貴重な七星未来の生写真が手に入り、満面の笑みを浮かべる昌太郎。
その写真を右手で握り締め、上機嫌で家のリビングまですたすたと歩き、ソファーへと腰を下ろそうとしたその瞬間だった――。
昌太郎の部屋だけでなく、アパート全体を包み込むほどの巨大で真っ白な光が、体全体を一瞬にして包み込んだのである。
「うぅっ…………! 何だ!?」
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