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そうして二人の唇が重ねられていく。アランの腕がマリアの背に回り、キスは濃厚に交わされていく。アランの手が、マリアのドレスの襟ぐりを少し、さげた。そうして腕をマリアの背の隅々まではわせる。
「あ、ダメよ……!」
マリアが言っても、アランはにやりとしたまま、姫の細い体を撫でまわす。
「ダメだったら、ダメ……!」
「命令とあらばやめますが?」
これを聞いたマリアは、心が高ぶるのをおさえかねて、彼の背に腕を回した。
「いや、続けて……」
アランがにやりと笑う。その時だった。
世界がぐらぐらと、煮たてられた鍋の果実のように踊り始めた。
「きゃああ!! 」
世界が果実だとしたら、人の強い力でもぎとられんとするような強い衝撃だった。
アランはマリアを抱き留めながら、ふと先に贄としてささげられた少女のことを思った。あの少女はあの後、顔の皮膚をとりさらわれて、手足も火傷させられ、とろかされたはずだ。その彼女を捧げたのにも関わらず、やはり女神の怒りはとけそうにないのか。ならば神官たちはこうも考えるであろう。やはりそのあたりのつまらぬ品のない少女より、優れた高貴な美しいものを供えるしかない。だが――そうなればきっと次に贄として狙われるのは――。アランの寂しげ
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