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製菓学校が冬休みに入った珠美は、午後の落ち着いた時間になったのを見計らって、クリスマスにみんなに振る舞う用にとおじいちゃんに断ってババロアを作っていた。
富さんのリクエストでひとつは抹茶のババロアに、もうひとつプレーンなものに後からフルーツとソースで飾り付けを行う予定だ。
クリスマスを意識してラズベリーのソースと甘い苺を用意してある。
出来上がりを楽しみにババロアの液を型に流して冷蔵庫にしまうと、背後から大きなため息が聞こえた。
「はぁ~」
そんな大きなため息を吐いてルパンのカウンター席で項垂れているのは、誰でもない吉井だ。
最初は心配して声を掛けていたおじいちゃんも、最近は黙って見守ることに決めたらしく全く反応しなくなった。
吉井自身も先生のテーブルに着くと邪魔になることをわかっていて、カウンター席でコーヒーを前に苦悶の表情を浮かべている。
だからいつもカウンター席に座る富さんが、テーブル席に追いやられたと拗ねていた。
隣に座ればいいのにと言っても、それは嫌らしい。
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