754人が本棚に入れています
本棚に追加
「ニュースになってからじゃ遅いのよ。そんなことになったら原稿どころじゃなくなるでしょ」
「それはそうですけど、居所がわからないよりはいい気もしますけど……」
「どっちにしても、見つからなければ意味がないのよ。やっぱりGPSをもっと早くつけておけばよかった」
あまりの切羽詰まりように、とうとう珠美も掛ける言葉を失った。
しかしそこは大人の女性、吉井も愚痴が過ぎたと感じ取ったのだろう。
顔を上げて小さく息を吐いた。
「クリスマスも仕事なんてことになったら、高級ディナーくらい奢ってもらうんだから」
「クリスマスまで仕事っていうのは辛いですからね」
「どうせデートする相手もいないけどね」
結局仕事が恋人だとオチをつけて、吉井はコーヒーを飲み干した。
.
最初のコメントを投稿しよう!