彼女たちの苦悩

4/66
前へ
/346ページ
次へ
「ニュースになってからじゃ遅いのよ。そんなことになったら原稿どころじゃなくなるでしょ」 「それはそうですけど、居所がわからないよりはいい気もしますけど……」 「どっちにしても、見つからなければ意味がないのよ。やっぱりGPSをもっと早くつけておけばよかった」 あまりの切羽詰まりように、とうとう珠美も掛ける言葉を失った。 しかしそこは大人の女性、吉井も愚痴が過ぎたと感じ取ったのだろう。 顔を上げて小さく息を吐いた。 「クリスマスも仕事なんてことになったら、高級ディナーくらい奢ってもらうんだから」 「クリスマスまで仕事っていうのは辛いですからね」 「どうせデートする相手もいないけどね」 結局仕事が恋人だとオチをつけて、吉井はコーヒーを飲み干した。 .
/346ページ

最初のコメントを投稿しよう!

754人が本棚に入れています
本棚に追加