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1話 偽装の平和
燃え盛る炎を背景に、血塗れの剣を持つ少年と脆い鎧を背負った兵士が対峙していた。
兵士の胸は、鎧越しにも赤く染まっていて、暗くて分かりにくいが重症レベルの出血量だろう。
…それも、その筈だ。
彼の胸は少年によってたった今、切り裂かれたのだから。
「…気分はどうかな?」
「ははっ、最高だよ。君に殺されるのなら本望だ。」
「…その割には悔しそうだけどね。違うかい?」
「正解だよ。」
兵士は口を開きかけて、また結んだ。
息遣いが荒くなる。
少年はそれを愉快そうに笑う。
手には少年の腰ほどまでの長い剣が握られていて、剣に付いた血は流れ、地面に赤い水溜りを作っている。
「最後に一ついいか。…お前は俺達に何を望んでいる。チームを破滅させてこれから“ガイアヘル”の被害はどうする気だ。」
兵士が少年を見据える。
すると、少年はその姿を鼻で笑った。
「さぁ。どうするんだろう。でも望んでいることは一つだからね。“チームを破滅させること”それが俺の望みだ。」
言い終えると、少年は剣を振り上げた。
衝動で少年の黒髪が揺れる。
少年の後ろでは、街が燃え、沢山の兵士が倒れていた。
血を流して、涙を流して倒れていた。
「_____…さすが、“悪魔の子”だ。」
兵隊が最後にそれを呟くと、少年は剣を振り下ろした。
残されたのは、少年と一人の少女だけだった。
少年は自身の顔についた、今殺した仲間の血を拭って、高笑いした。
そのまま物陰にいた少女に近づき、手をとって炎の方へと消えて行く。
綺麗な黒髪は、真っ赤な炎と共に闇夜へと消えていった。
あとに残ったのは、仲間の血と汗と、屍だけだった。
_____…殺したのは、悪魔の子。
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