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「人とは愚かね」
人気の絶えた、否、文字通り人の姿の消えた教室内に残る者が言葉を交わす。
「当て付けかい?」
艶めく女の声に応えるのは悪戯好きそうな男の声。
普段の冷たさすら漂わす声色は無い。
「僕はダンピールだ。まだ人の部分が残っている」
「違うわ。それに貴方は、新祖に成り得る力を秘めた存在よ。だから私は貴方に従うの。この純血の吸血鬼がね」
「君の方が強いのに、女じゃ新祖に成れないなんて随分な男尊女卑だよね」
「古臭いのよ、吸血鬼の社会は」
「僕は新風に成り得るかな?」
それに女は答えない。
意味深な微笑を浮かべ、天を駆け昇り始めた月を見上げる。
昼間の明るさは微塵も残っていない空を冷えた光で照らす月。
怜悧な光は、教室に残る男女にこそ相応しく。
闇の眷族を輝かせた。
美しく、冷たく。
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