第一章

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本性を露見した臨戦態勢。 これより姿を現すだろう存在は、人を掌で転がし遊ぶ程に簡単な相手ではない。 幾度も戦って来た同じ闇の眷族。 派閥を組まぬ吸血鬼にしてクルースニク。 叶と同じく常に名を変えて現れる者と、片割れを失った人狼の娘。 そして霧影継羽(きりかげつぐは)。 人とも闇の眷族とも言えぬ半端者。 月光牙霧人の幼馴染にして宿敵が来たのだと、声も姿も持たぬ死霊が伝えて来ていた。 「面倒臭いわ」 「じゃあ、今回は逃げちゃう? 下僕は居るからね。あいつ等に相手して貰っている内に姿を眩ましちゃおうか」 殺気すら滲ましていながらも楽しげに言葉を紡いだ上で、霧人は臨戦態勢を解き人らしい姿にと戻す。 「僕も面倒臭いし、呼べば百人を下らない生徒が簡単に集まるよ」 「あら、今回は随分と下僕を作ったものね」 「時間は掛かるけど、先生方を含めて全員だって集められる」 引き上げられた唇の端から八重歯程度に覗く牙。
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