第一章

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「何で、何でよ? 仲間にしてくれるんじゃなかったの」 真っ白なシャツの、襟元を掴む手が力なく滑り落ちて行く。 支える目的をとうに失った腕は差し伸べられない。 黄昏の中、浮かび上がる少年の美しい顔。 鮮血に染まる口元。 鋭い糸切り歯が覗く、その口が妖しく蠢き告げる。 「美味しかったよ。でも君は、せいぜいがペット止まりの人間さ」 見開かれる少女の瞳。憧れに満ちていた心が、たった今自分の身に起こっている事態を飲み込めない思考が、騙られた言葉を繰り返す。 『おいで』 『君は美しい』 『永遠の若さを』 『仲間にしてあげるよ』 『君の復讐を手伝ってあげる』 甘く囁かれた言葉。 力強い眼差し。
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