17人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ
魅了され、少女は目の前に現れた人と同じ姿で違う存在に全てを委ねた。
己の復讐心と共に。
ああ、こんなにも素敵な存在が現実に居たなんて。
闇の眷族を従える最強の種族。
吸血鬼。
認められたと言う想いが、今は只の幻想でしかなかった事に気付いている。
特別なのだと信じる思考に囚われ、最早、取り返しは付かない過ち。
体から吸い取られた命の流れ。
限度を超えて奪われた血潮。
己の体温さえ維持できなくなった身体は急速に冷え、力はとうに籠らない。
朦朧とする意識の中で相手を見上げた。
否、見上げさせられた。
だらしなく俯く顔を、髪を掴まれ引きずり上げられて。
「ふふっ。可愛い子だと思っていたけど、化粧が剥げちゃえば少し顔立ちが良い程度だね」
鼻先で笑う吐息が顔にかかる。
漂う鉄臭さは、今し方飲まれた少女の血の匂い。
「なかなか楽しませてくれたご飯だったよ、君は」
最初のコメントを投稿しよう!