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対峙する少年の人を超越した姿。寒気がする程に整い、怜悧さを濃く浮かべる表情。
「開かれていながら閉鎖された空間。内部で問題が起こっていても外に漏れる事は少ない」
冷たい言葉に心さえも芯から凍えて行く。
頭髪を掴まれているのに痛みはなく、体からは温もりと共に力が抜け、煮えたぎらせていた筈の復讐心も燃え上がらない。
知っているからだ。
眼前の男の力を。
楽しげに見上げる視線に、自分の身体が片腕だけで高く持ち上げられ爪先が宙に浮いていると認識する。
窓の外にでも放り投げられてしまうのだろうか?
こいつには容易い作業だ。
教室の扉が引かれる音を聞き、視線だけを少年の肩越しに力無く向かわす。
俯き加減の生徒の姿が見えた。
「やあ、来たね」
瞬間、自分に向けるよりも優しい声音に、二度とたぎる筈の無い復讐心が再び燃え上がった。
何故そいつが生きているのだと。
そいつは底辺のウジ虫だと。
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