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底辺。
底辺。
底辺ッ。
単純な言葉の呪詛を頭の中で繰り返し叫ぶ。
最早声すら出せぬ少女は、憎悪に満ちた瞳で眼前の光景を見るしか術が無かった。
「安心して。貴女の存在は綺麗に消してあげるから」
恍惚とした瞳で先輩を見上げる、元、底辺のクラスメイト。
吐息の漏れ出でたその唇を、先輩の異様に紅い唇が塞ぐ。
かつて遊びでイジメ抜き、常習化した行為をわずかな手抜かりで証拠とされて、少女の立場を一変させた女が同じ女の先輩と口付けを交わしている。
悔しい事に、それは美しい光景だった。
光の逃げて行く教室で睦み合う少女の姿は、退廃的な美を、背徳的な美しさを暗闇の中に鮮烈に浮かび上がらせて行く。
「先輩、先輩」
あえぐ様な、泣く様な、切ない声が微かに響く。
幽玄の暗闇に抱かれて。
無様に髪を掴まれ、持ち上げられる少女の前で。
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