猟銃と狐

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猟銃と狐

 人はなぜ睡眠をとらなくてはいけないのか。 寝ずに働けたら、きっと私は大金持ちになるのだろうな。 睡眠から目覚め、天井の木目を眺めながら私は他愛もないことを考えていた。 人に睡眠は必ず必要だし、睡眠は心も回復させてくれる。 そんなことは理解していたし、変えようのないことだと諦めていた。 だから私のこれはただの愚痴で、言い訳にも似た不満なのだ。 私の家はいくつかある長屋のひとつで、たいして広くもなく私と妻と息子の三人で定員だ。 硬い床に薄い布団を敷いて寝ているため、体のあちこちが痛くなり、元々持っていた腰痛は元気にその効力を発揮していた。 まったく嬉しくない相棒だよ、腰痛君よ...。 「あんた、起きたなら、ほれ仕事やかんね。」 どうやら妻に起床したのがバレたらしい。 炉に火を組み、こちらを見ようともせずに妻は自分の仕事をしていた。 長年夫婦をやってきた。私も彼女もお互いのことは自分のことのように分かってしまうのだ。 なので、次にくる言葉も察しが付く。 「さ、起きた起きた。」 ほれ。 これが我が家の朝の挨拶なのだ。 その言葉をきっかけに私はゆっくりと体を起こした。 息子の姿はなかったが、いつもの友達と遊んでいるのだろう。 この前は、お役人にちょっかいをだしてひどく目を腫らして帰ってきた。 子供は元気が一番。ただ、ほどほどに元気であってくれと少し願ってしまう心配な父もここにいるのだった。
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