町の道具屋 ハッタとヘイヤ

5/5
176人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
 アリスが魔王討伐へと動き出す。その頃、ジーンは魔王の煌びやかな豪邸に目を輝かせていた。 「すごーい! 魔王の城って、もっとジメジメした暗いところを想像してたよ」 「お気に召されたようだな、姫よ」 「だから姫じゃないって……」  魔王は金色に光る鳥の彫刻を手渡す。  指先が触れ、少しだけ頬が赤く染まった。 「かつて勇者一行を苦しめた伝説の魔物がモチーフとなっている。黄金の輝きに相応しい魔物だったよ」 「カッコいい!」 「欲しければくれてやる」 「ほんとっ!? えへへ……嬉しいなあ……」  弾ける笑顔が魔王の心を魅了した。  なんだ、この胸の高鳴りは? これが恋というものなのか? 私は魔王だぞ。恋なんぞするはずが…… 「ありがとう。大切にするね」 「我もジーンを大切にすると誓おう……」 「えっ?」  相手が男だと気付かず、甘い言葉を口走ってしまった魔王。  着実に黒歴史が積み重ねられていく……
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!