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「ヘイヤ、腹を括りなさい。既にハッタは報酬を受け取ってしまったのよ」
誰が一番被害を受けているのか? それは確実にヘイヤだろう。
セバスはアリスの命を守るのが仕事。ハッタも報酬を受け取っている。
ヘイヤは? ポシティブに考えるのならば、安請け合いをするものじゃないと学習できた。
まさに、触らぬ神に祟りなし。
「ううっ……ううっ……」
「私が見た魔王は、弱々しい女の子に手をあげる様な奴じゃなかったわ。ダカラ、アンシンシテ」
安心できる訳が無い。完全に棒読みで他人事だ。
「魔王より城までの道程が心配ね」
「遠いのか?」
「噂だけど、強い魔物が待ち構えているらしいのよ。セバス、知ってる?」
「魔王の城へと向かう為には、魔王軍の関所を三ヵ所通らねばなりません。それぞれ、ドードー、チェシャ、ハンプティという強い魔物がいます」
ハッタとヘイヤは唾を飲み込む。一般市民でも名前くらいは知っている有名な魔物だ。
「なるほどね……よし、ハッタ」
「なんだ?」
「空を飛ぶ道具を出しなさい」
……
……
「ある訳無いだろ! そんな物があったら、馬車なんて走らせてねーよ」
「使えないわね。では、ヘイヤ」
「はいっ」
「透明になれる道具を出しなさい」
「無いですぅ」
「二人とも使えないわね。これでは、報酬の見直しも考えなくちゃいけないわ」
こいつ……報酬を値切ろうとしているのか? それとも、やる気を出させて貴重な道具を大量に使わせるつもりか?
ハッタとヘイヤは沈黙し、何も聞かなかった事にした。
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