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馬車を進めて数時間後。
特に会話もなく、アリスはスヤスヤと眠りに就いていた。
「こいつ、どういう神経をしてるんだ? 今から魔王を倒そうとしてるのに爆睡かよ。顔に落書きしてやろうかな」
筆を手に取り、アリスの顔に髭を描くハッタ。それでも起きない。
「ねえ、お兄ちゃん。本当に魔王を倒せるのかな?」
「それは……セバスさん次第だろ? 危なくなったら、アリスを盾にして逃げよう」
「お兄ちゃん!」
「冗談だよ。そんな事をしたら、後でアリスに殺されるからな。ジーンを盾にして逃げるさ。ハハッ」
「賛成です」
……
……
「セバスさん?」
「ハッタ様、どうされました?」
「いえ……何でもないです」
この人はアリス以外の全てを盾にする。そう感じたハッタは目を背けた。
代わりにヘイヤが質問する。
「魔王の関所って、どれくらいで着くのでしょう?」
「もうすぐ着きますよ。最初はドードーの関所です」
「ドードーって、どんな魔物なんですか?」
「暑苦しい魔物だと聞いております。関所を通るには、ドードーを無理やり倒して通るか、短距離走で勝たねばならないらしいですね」
「短距離走?」
「面白そうじゃない」
アリスが突然目覚め、不敵に笑った。
「あらゆる状況から逃げ出す事で培った脚力。逃げ足の速さを見せつける時が来たわね……出番よ、ハッタ!」
……
……
「俺かよっ! アリスだって逃げ足は速いじゃないか」
「私はドレスなのよ? 脱いで欲しいの?」
「……お兄ちゃんの変態」
「変態扱いするな! そうだ、セバスさんの方が速そうだろ?」
「暑苦しい男など、視界にも入れたくありません」
「えっ?」
「私は魔王との戦いに備えねばならないと言いました」
聞き間違えのレベルを超えている。しかし、ハッタは恐怖で何も言えなかった。
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