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「では、アリス様。手鏡でお顔の確認をして下さい」
「顔? 何か付いてるの?」
手鏡を覗き込むと、ハッタの描いたラクガキの髭が映し出された。
プルプルと震え出し、鏡が割れ、黒いオーラがアリスを包み込む。
禍々しいオーラに気付いたハッタが振り返った。
「殺す……殺す……殺す……殺す……殺す……殺す……」
「ちょっ、ちょっと待っ……」
一触即発の二人を無視して、セバスが声を上げる。
「さあ、ヘイヤ様」
「えっ、あっ、その……スタート」
勢いよくドードーが駆け出した。
少し遅れてハッタも飛び出す。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
そして、あっという間にドードを追い抜いた。
しかし、アリスは離せない。
「許さない……許さない……許さない……許さない……」
「助けてくれ―――!」
限界を超えた脚力を見せ、超加速ブーツの効果も加えているのに振り切れないハッタ。ヒールで追い掛けるアリスの速さは、神の領域と言っても過言では無い。
二人はゴールの大木で止まらず、地平線の彼方へと消えて行った。
「おっ、お前達……本当に人間なのか? 髯のお嬢さんなんて、悪魔の様な顔をしてたぞ?」
呆気に取られたドードーが呟くと、セバスは優しい瞳を見せる。
「さあ? 私にも分かりません」
この人が一番怖い。
ヘイヤは腰を抜かし、ガタガタと震えていた。
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