連れ去る相手を間違えていませんか?

4/7
176人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
「ジーン様は連れ去られてしまいましたが、どうにか助かりましたね」  セバスが呟く横で、アリスはプルプルと震え始める。 「何故なの? 何故、兄上を連れ去ったの? 私より兄上の方が可愛いから?」 「落ち着いて下さい」 「兄上は男なのよ? おっとりとした可愛い顔をしてるけど、女の私に敵うはずないよね?」 「落ち着いて下さい」 「何で兄上は、あんなに頬を赤く染めて、いやらしい声を出したの? 魔王を魅了したかったの? 変態なの?」 「落ち着いて下さい」 「そうよね……私より兄上の方が可愛いもんね……」 「落ち着いて下さい」  ……  …… 「ふっ、ふざけるなあ!!! どこの世界に私より可愛い男がいるのよ! 間違えるなんて有り得ない。殺す、絶対に殺す、三回殺す! 魔王をぶん殴って、蹴りを喰らわして、剣で斬り刻んで、ハンマーで粉々にしてやるわ!」 「落ち着いて下さい」 「お前は九官鳥か!? 落ち着いて下さいしか言えないの!? 落ち着ける訳が無いでしょ! 男に負けたのよ!? 私のピュアハートは粉々よ!」 「落ち着いて下さい」  ……  …… 「黙れーーー!!!」  アリスの怒号は宮殿中に響き渡った。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!