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暫くして落ち着きを取り戻したアリスは、冷静に状況を分析する。
「セバス、あなた随分と落ち着いているわね」
「アリス様がご無事だったので」
「兄上は攫われたけどいいの?」
「国王様の命令は姫を守る事……問題ありません」
「そう。あなたの考え、嫌いじゃないわ。取り敢えず紅茶でも飲みましょ」
セバスが紅茶を用意し、散らかった部屋で一息入れる。王子が攫われ宮殿内はパニックに陥っていたが、この二人は我関せずだ。
「ねえ、セバス。なんで魔王は簡単に侵入できたの? 腕利きの兵士が守っていたはずでしょ?」
「この国は長きに渡って平和が続き、本当の戦いを知る者などいません。いくら腕利きの兵士と言っても、魔王から見れば赤子の様なものでしょう」
「そこまで知っていて、あなたは冷静だったよね」
「剣術、槍術、弓術など、武芸全般を極めておりますので、アリス様を守るだけならば難しくはありません。それに、昔は魔物との激しい争いが繰り広げられ、私は魔物討伐軍のリーダーをやっていた事もあります」
「魔物討伐軍? 聞いた事の無い話ね。若く見えるけど、セバスは何歳なの?」
「永遠の二十三歳と覚えて下さい」
……
……
「話が逸れたわね。じゃあ、単刀直入に聞くわ。セバスなら魔王に勝てるの?」
「一対一ならば、恐らく……」
「勝てるのね? では、一緒に魔王を退治しましょう」
「いえ、結構です」
「聞こえないわ。何て言ったの?」
「光栄ですと言いました」
二人の茶番は終わらない。
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