連れ去る相手を間違えていませんか?

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「つまり、アリス様はジーン様を助けに行くのですか?」 「私は魔王をぶん殴りたいだけなの。兄上の貞操の危機なんてどうでもいいわ。それに、男と分かったら放り出されるはずよ」 「それは無いと思われます。魔族には性転換の秘術があると耳にしました。外見だけで言えば最高クラスの美少女ですから、女にされて元気な魔王の子を産むでしょう」 「兄上が女になって魔王の子を産む? それはそれで面白そうね。でも、私より可愛い姫なんて許せない。魔王をぶん殴るついでに助けてやろうかしら」 「では、急がねばなりません」 「そうね……セバス、すぐに動くわよ」 「いえ、私は結構です」 「聞こえないわ。何て言ったの?」 「ご指示をと言いました」  細かい指示を聞き、セバスは部屋を出ていく。  一人になったアリスは、クローゼットから使えそうな物を選別した。中には短剣や銃など、物騒な物ばかりが転がっている。  ショルダーバックに必要最低限のアイテムを詰めていると、セバスが召使のリリスを連れて戻った。 「アリス様、お呼びでしょうか?」 「リリス、あなたの夢は美味しいものを食べて寝るという、怠惰の無限ループよね?」 「なっ、何故それを!?」 「その夢を少しだけ叶えてあげるわ。私は暫く出掛けるから、あなたはドレスを着て、運ばれてきた食事を取り、ひたすら寝続けなさい。決して、この部屋から出ては駄目よ。誰か来たら泣きそうな声で、一人になりたいの……とでも言って追い返しなさい」 「食べて寝るだけ? そんな……夢の様な世界が!? お任せ下さい」  替え玉と気付いても欲望には勝てない。理由も聞かず、リリスはベッドに飛び込む。 「これで準備はオッケーね。父上は兄上を取り返す事しか考えていないから、暫くは気付かないはず。さあ行くわよ、セバス。期待してるからね」 「いえ、結構です」 「何て言ったの? 聞こえないわ」 「光栄ですと申し上げました」  こうして、アリスとセバスは宮殿を抜け出した。  
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