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城下町を歩くアリスは、セバスに黄金のティアラと走り書きのメモを渡す。
「これを売って、メモに書かれた買い出しを頼むわ」
「宜しいのですか?」
「構わない。但し……」
「足が付かない様に、闇の商人を使うのですね。そして、王様には盗まれたと伝える……」
「話が早くて助かるわ。私はハッタの家に行くから宜しく」
「一時間後に戻ります」
言葉を切ると同時に、セバスは姿を消した。
アリスは町外れの家まで駆けて行く。
そして、勢いよくドアを開けた。
「いらっしゃい……げっ、アリス!?」
「アリスちゃん、いらっしゃい」
「久しぶりね。ハッタ、ヘイヤ」
アリスと同じ年頃の双子が紅茶を口にしている。
妹のヘイヤが新しいカップを用意し、紅茶とクッキーを差し出した。
「お茶会をしていたの。アリスちゃんもどうぞ」
「ありがとう」
テーブルに着き、紅茶の香りを楽しみながらハッタに視線を送る。
「ハッタ、実は……」
「断る!」
「まだ何も言ってないわ」
「アリスに関わると碌な事が無い」
「失礼ね」
「忘れたのか? ドラゴンの鱗が高く売れると言って、俺を盾にしたよな? 炎を吐かれて黒焦げになったんだぞ。魔物の巣窟では俺を囮に使っただろ? 瀕死になって生死の境を彷徨ったんだ。他にもある。あの時は……」
よほど恨みがあるのだろう。ハッタの口は止まらない。それを見兼ねたヘイヤが割って入った。
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