第1話 真夏と青年

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 気づけば、そう呟いていた。俺にとっては、日本の平和のために犠牲になれる。そんなことがわからないのか。とか、人間は犠牲なくして生きていけない、それが自分に向いたとたん、自分たちを弱く、美しく見せようとする人が嫌いだ。責任も取らず、他人に押し付け逃げているようにしか見えない。たまたま運が悪かった、それだけで現実を直視できない人間が嫌いだった。など、様々なことを考えていた。  チョコデニッシュを食べ終わり、お茶に手を出そうとしたとき、時計を見た。長い針はすでに十分を指していた。いつもよりは遅かったがそれでも一限目の授業には間に合うぐらいのペースだ。  この後は、着替えて…ああ、今日の三限目は定期レポートの日か、印刷してホッチキスで止めたのが机の上にあったはず。  着替えた後はレポートを回収、歯磨き洗顔、寝癖直し、水筒へお茶を入れる。いつも通り抜かりなくこなした。唯一の欠点といえば、渦を巻いた髪の毛が治らないことぐらいだ。これは俺の父親から受け継いだものであり、父親とのつながりでもある部分なので何かと大切にしていた。  大学へ行く準備が終わりそのまま出かけようとした。部屋の鍵を閉め。たまたまあったマンションの住民に挨拶をして駅へ向かった。駅まではそう遠くはなく歩いても五分で着く。  駅に着けば、いつも通り定期券で改札を抜けホームまで向かい、そして電車に乗る。しかし、今日は暑い。梅雨明けが発表され、これから夏真っ盛りだ。     
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