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「実際にあった…って、大昔に龍がいて、国を荒らしてたってこと?」
「そうだ。だがそれだけじゃない。篭堂の祖先・新右衛門は本当にその龍と戦い、そして倒したんだ」
「………」
正直、なんて言ったらいいか解らなかった。
子供の頃は、本気でこの話を信じていたし、自分が篭堂の血を引いていることを誇りに思っていた。
だが今は、これが篭堂の忌まわしき習わしの一端を担う創作であることは嫌でも解る。
だからこそ、大真面目に話す父になんと言って返したらいいのか、言葉に詰まってしまった。
しかし俺が言葉を発するより先に、父は口を開いた。
「新右衛門は、龍を倒したことで英雄となり、富と名声を得た。篭堂家が今も確固たる地位を確立しているのは、祖先の活躍のお陰なんだ。だが新右衛門は、同時に龍の呪いをも得てしまった…」
「龍の呪い?」
「そうだ。殺された龍が篭堂にかけた呪い…それは病の様なもので、突然発症する。そして発症したまま放置すれば、半年と経たず死に至る」
「…それって」
答えを聞かずともわかっていた。
目の痛み、手の甲の紋様。
それらが呪いの発症を意味していることに。
「ああ。呪いは激痛と同時に、身体のどこかに呪いの紋様が浮き出ると言われている。その手の甲のものがそれだろう」
「そんな…それじゃあ俺は…」
死ぬ?
その言葉が頭を過る。
しかし父は、首を横に振った。
「放っておけばいずれそうなる。だが、呪いを消す方法がある。それをすればお前は助かる」
「そ、そうなのか…その方法って?」
「殺すんだ。お前以外に呪いを受けた相手を」
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