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「え?…殺す?」
物騒な言葉に、またも言葉を詰まらせる。
そんな様子も気にせず、父は話を続けた。
「龍の呪いは、お前一人が発症したわけじゃない。発症する時は、必ず複数の人間が同時に発症するんだ。自分以外の全ての発症者を殺せば、お前の呪いは解ける。それが龍の呪いなんだ」
「ちょ、ちょっと待って…一回整理させて」
予想だにしない話の連続に、俺は一端会話を切って心を落ち着かせる。
そして改めて父に質問した。
「…その呪いは、俺以外に誰が出ているんだ?昨日慌てて本家に行ったのは、その辺を確認するためだったんだよな?」
「その通りだ。昨日の時点で確認できたのは、お前を含めて7人。だが誰が発症したかは教えてはいけない決まりになっていてな。わかっているのは、篭堂の血を引くお前以外の7人もの人間が、お前の命を狙っているということだ」
「………」
篭堂の血筋。そして呪い。
にわかには信じがたい話だが、篭堂という家柄に鑑みるに、あり得ない話じゃないと思う自分がいる。
それに、俺の異常な身体能力の高さ。
これこそ龍の恩恵に預かっていると思えば、自然と納得できる部分もあった。
だが…
「人を…殺すなんて…」
自分が死にたいわけじゃないが、人を殺したいとも思わない。
話の内容を理解できても、とても簡単には受け入れられなかった。
「…前回、呪いの発症が確認されたのは、二百年近く前のことらしい。本家もまだ確認作業に追われているところだ。今すぐ殺しあいが行われるようなことはまずないだろう。俺の方でも本家と連絡をとって、詳細を確認する」
「父さん…俺はどうしたら…」
「…とにかく、明日は学校に行きなさい。普段通りの行動を心がけるんだ」
「…わかった」
そう言って父さんはスマホをいじって耳にあて、そのまま部屋を出ていった。
残された俺と母は、少しの沈黙の後
「朝ごはん…作るわね」
「ん…」
そう言って、いつもの日常に戻った。
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