開戦

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初めは、小さな違和感だった。 父の話を聞いてから4日後、視界がおかしく感じるようになった。 どうおかしいのかと聞かれると中々説明しづらいのだが、なんとなく そう、なんとなくだが、視界に写る物の動きが、先読みできるようになった。 例えばこちらに向かって歩いて来る人間が、何秒後に俺と交わるか 或いは投げたボールが、何秒後に地面に接触するか それらが瞬間的にわかるようになった。 と言っても、常にわかるわけではない。 多くの場合、集中してその物質に視点を充てることでその現象は起きていた。 そして何度か経験するうちに、それが左眼を介して起きているのだと気が付いた。 左眼…そう。あの日激痛を味わった、左眼だ。 俺は鏡の前に立ち、そして自分の左眼をまじまじと見た。 右眼と比較しても、特に違和感は感じられない。 しかし集中してあの感覚を呼び起こすと、そこで初めて気が付いた。 「眼が…赤い?」 瞳の色がうっすらと赤く染まり、瞳孔は蛇のように細く、鋭くなっていた。 「これは…」 一体なんだ?俺の眼はどうなってしまったんだ? 沸いてくる疑問も、答えてくれる人は誰もいない。 俺はスマホを取り出し、父に電話をかけた。 「…もしもし?トモか?どうかしたか?」 連日忙しく動き回る父に連絡が着くか微妙だったが、父が電話に出てくれたことに俺はホッと安堵した。 「父さん、実は左眼の様子がおかしいんだ。できれば家でゆっくり話したいんだけど」 「フム…実はこちらもある程度情報が集まったから、今日は帰るつもりだったんだ。夕飯までには帰るから、母さんにも言っておいてくれ」 「わかった。待ってるよ」 そう言って俺は電話を切った。
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