開戦

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その日の夜。 帰って来るなり、父は開口一番、こう口にした。 「開戦は10日後の28日に決まった」 開戦…それは呪い発症者同士の、戦いを意味していた。 「開戦…って言っても、誰が呪いの発症者か解らないんだろ?どこでどうやって戦うんだ?」 「場所もルールも無い。どこで戦ってもいいし、何をしても構わない。言うなれば、それがルールだ」 「何でも…あり?」 「そうだ」 「何でもありって…」 俺は言葉を失った。 人が人を殺す方法など、数多にある。 ましてや本家の人間ならその圧倒的な経済力、情報力、収集力を駆使して殺しの方法をいくらでも取り揃えられる。 相手が誰かはわからないが、本家の人間に発症者がいないとは考えられない。 つまりこの戦いは、圧倒的に本家有利、分家不利なのだ。 今更に始まった話ではないが。 しかしこれはあまりにも、だ。 「トモ、悲観するな。生き残る手段はある」 そんな俺の状態を見越していたのだろう。 父は、すぐに希望の材料となる話をし出した。 「まずこの戦いは、呪いの発症者のみで行われるのが暗黙の了解となっているそうだ。故に如何に本家であろうと、直接的な戦いの場面に第三者が介入することはない」 「…発症者同士の戦いに、横槍は入れられないってことか」 これは確かに大きい。 分家など本家の力の前では、簡単に押し潰されてしまう。 だが当事者同士の戦い…つまり個の力によるぶつかり合いであれば、武器の差はあれど、ある程度純粋な個人の力量による勝負にもっていける。 平等とはいかないまでも、大きなハンデにはならないはずだ。 「とはいえ、情報収集や経済的支援等は当人以外も許されている。あくまで直接的な戦いの場面に限るということだけ理解してくれ」 「ああ。充分さ」 「それともう一つ、これが最も重要なことだが、この戦いでは新たな能力による開花が、勝敗を大きく左右する要因となる」 「新たな…能力?」 「その眼だよ。お前の知りたがっていた、な」
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