開戦

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高校三年生の春。 辞めたはずの剣道部の友達が、俺に頭を下げてこう言ってきた。 「頼むトモ!夏の最後の大会、団体戦メンバーとして出てくれ!」 その台詞を聞いたのは、これで三度目だった。 「…あのな。何度も言ってるけど、その頼みを聞くことはできないよ。三顧の礼を持ってしてもな」 「頼む!お願いだ!この通り!!」 話を聞かずに頭を下げ続ける友人に、俺…篭堂灯李(こどうともり)は深々とため息をついた。 「その1、俺は勉強優先のために1年前に部活を辞めてる。つまりブランクがある。その2、苦楽を共にしたメンバーを差し置いて俺が加入したら、部員から反感を買う。その3、そもそも俺にヤル気がない。以上」 「お前がいないと勝てないんだよトモぉ~」 身長180㎝、体重90㎏もの体格を有するその友人は、気持ち悪い程にすり寄り、そして泣きついてきた。 「体育の剣道で見たぞ。お前の動き、全く衰えてなかったじゃないか。むしろ1年前よりキレがあった」 「気のせいだよ。気のせい」 「嘘つくなぁ!なぁ頼むよ~レギュラーメンバーの一人がケガしちまって、大会までに間に合わなそうなんだよ。お前の実力なら部員もきっと納得する!だから頼むよ!!」 「…どんな理由であれ、俺は剣を置いたんだ。悪いけど、後の問題はそっちで解決してくれ。…それじゃあな」 「あ!トモ!」 止めようとする友人の手を払いのけ、俺は教室を出ていった。
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