開戦

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この世は、どうしてこんなに理不尽にできているのだろうと常々思う。 特に何の練習もせずに、100m走で12秒台前半を出したし 硬球を全力投球したら130km出たし 剣道部時代には、1年生の時に日本一の高校生になった。 才能と言ってしまえばそれまでだが、血の滲むような努力をして結果を出そうとしている人から見ると、自分は本当に疎ましい人間なんだといつも思う。 こんな才能、いっそ無ければよかったのに。 何度そう思ったことか。 「…なんで、俺なんだろうなぁ」 ボンヤリと虚空を見つめながら、そう呟く。 別にヤル気もないのに。目標もないのに。 なんで才能だけあるんだろう。 …あの『龍王伝説』って、本当なのかな… そんなことを考えていた時だった。 「…熱っ!?」 突如、左手の甲に燃えるような熱さを感じ、俺は反射的に声を出した。 なんだ!?一体!? 「ぐっ!?」 と思うと同時に、今度は左眼に猛烈な激痛が走る。 まるで眼に釘を打たれ、グリグリとえぐられるような激しい痛みが。 「ぐっ!あああああっっ!!」 堪らず、左眼を押さえて膝をつく。 今まで味わったことのない痛みに意識を失いかけたが、10秒程経過すると、自然と痛みは消えていった。 「…今のは…何だったんだ?」 持っていたカバンから小さな鏡を取り出し、左眼を確認する。 出血くらいしているかと思ったが、眼は到って普通でいつもと変わらない。 眼球の動きも正常だ。 どうする?病院に行くか? そう考えていると、ふと左手の甲が汚れているのに気がついた。 「…なんだ?これは?」 そして、更に気づく。 左手の甲のそれが汚れではなく、奇妙なアザのようなものであることに。
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