開戦

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その日の夜。 母さんと二人での夕飯を食べながら、俺は母に尋ねた。 「母さん…父さんが言ってたこと、何か心当たりは?」 「………」 母は、何も答えない。 それが、暗に何かを知っていると示唆していることは明白であった。 「…別に、言えないならいいけどさ。父さんが帰ってくればわかるだろうし」 「…ゴメンなさい」 母は箸を置き、そしてゆっくりと頭を下げて謝った。 「私も全てを知っているわけではないの。だから今は安易に喋るべきじゃないと思ってる。本当にゴメンね…」 「いや、いいって。謝らないでよ。大丈夫だからさ」 俺は気にしていない様子でそう母に言った。 母は、それでも小さな声で謝っていた。 目に涙を溜めながら。 その様子から、俺は今起きている事態が思っている以上に深刻であると悟った。 結局その日、父は帰って来なかった。
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