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篭堂の一族は、少し特殊な家柄だ。
篭堂には『本家』と『分家』というものがあり、篭堂本家に産まれた最も有能な子供が必ず『本家』を継ぎ、それ以外は全て『分家』となる。
父は『本家』の長男として産まれたが、本家を継げる程の能力を備えておらず、次男が本家を継ぐことになったそうだ。
ここまでは家柄としてそこまでおかしくもないが、篭堂家はここからがかなり特殊だ。
篭堂には様々なルールが存在する。
例えば、分家は本家の人間に決して逆らってはならない。
つまり本家育ちならば、子供とて分家の人間よりも立場が上になるのだ。
また、篭堂家は結婚相手を自由に選ぶことができない。
分家の場合、いとこ等の法的に結婚が認められている親族や、政治家や医者といった一定以上の社会的地位を確立している人間としか結婚することが許されない。
本家に至っては表向きは分家と同じ条件だが、実は子供を作るのは四親等以内…近親者のみと決まっている。
つまり実子同士での子作りすら容認されているのだ。
これは篭堂の優れた血統を絶やさないためということらしいが、ハッキリ言って恐ろしい風習であると俺は思っている。
この他にも数多くのルールが存在するが、総じて言えるのは本家と分家には明確な優劣があり、分家の人間は本家の人間が嫌いである。ということだ。
「本家って…どうしてあんなとこに」
「お前の身体の異常を、本家に報告するためだ」
「だからなんで本家に!」
「『龍王伝説』を、知っているな?」
「え?」
予想外の質問に、俺の頭に昇った熱がスーッと引いていく。
篭堂には、龍王伝説という昔話がある。
その昔、空からやって来た龍が国を荒らし、その龍を篭堂の祖先が退治した。
大まかにはそんな話だ。
ルールの一つで、篭堂の人間は幼少期にこの龍王伝説の絵本を親から聞かされるのだ。
「勿論知ってるけど…それが?」
「…あの話はな、実際にあったことなんだ」
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