天上界の天使

3/10
前へ
/83ページ
次へ
「わたしはいいの。今日は『ゲーム』の日だし」  沙蘭も気にしていないのか、会話を続けた。  こんな話ができるのは、S・G・Vクラスの人間だからできる。この3クラスは他のクラスにはない授業を受けている。それは『ゲーム』と呼ばれる授業だ。 「だから少し遅くても大丈夫なのよ」 「へぇ、いいな。オレはまだ眠っていたい」 「龍勝君、葉月君に引けをとらないんだってね。先生が言っていたよ」  二週間前、龍勝は初めて『ゲーム』の授業を受けた。やり方は、サングラスのような装置をつけて電脳世界の中に精神だけが入り、目標地点まで敵を倒しながらゴールするものだ。速さ、正確さ、ケガの具合などで得点が決まり、総合1000点満点中900点以上を取ればレベルが1つ上に上がる。簡単に言えば、ゲームセンターに置いてある、ゾンビを倒していくようなゲームだ。  Gクラスではレイラと龍勝、アキ、キド、マキ、志木、の6人は最高のレベル5までクリアしていた。だが、志木はこの間レベル5をクリアしたばかりで、この6人の中では一番点数が低かった。逆にレイラは999点でクリアし、龍勝は満点でクリアしていた。 「そんなの偶然だ。退屈しのぎにはなったな」  初めてやるのに龍勝はあえてレベル5でやって一発でクリアした。レイラやアキ、キドも一発でクリアしたが、三人ともレベル1からやってクリアしたのだ。これには担当の先生も驚いていた。二千年も生きてきた龍勝にしてみれば、ただの遊び程度だったのだが。 しかし、なぜこんな遊びのような授業がわざわざ行われているのかは龍勝も知らないし、興味もない。  龍勝ははっと腕時計を見た。針は8時15分をさしている。 「じゃあ、遅れるから」  龍勝は走りながら言った。 「またね」  沙蘭は手を振りながら言った。 「龍勝君、今度は誰を殺しちゃうんだろうね」  沙蘭の背後で姿は見えないが、犬が唸ったような声がした。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加