思い

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―こうも変わり果ててしまうものなのか、エンジェルっていうのは。人間だと、ここまで変わらない。  目の前にいるジェナを見て、龍勝は驚いてしまった。こういうとき、二千年も生きてきたが、知らないことがまだまだ多いことに気付かされる。  ジェナの顔は無表情だったが、エンジェルという証拠である白い翼は、灰色になっていた。試しにジェナの目の前に凶暴な猫を放ったところ、ジェナは無表情でその猫を殺してしまった。 「ねぇ、もう終わりなの?」  ジェナはそう言うと、龍勝に襲い掛かってきた。龍勝が驚いているのはそれである。 龍勝はジェナに『龍心眼』という技をくらわせた。  この技は、相手の目をじっと見続け、龍独自の気で思考をほとんど停止させ、発する言葉で精神を『心の迷宮』に堕とし、命令するとその命令通りと動く人形にするというあくどい技だったが、今まで誰一人として口を利かなかったし、ましてや自分に襲い掛かってくる者などいなかった。  ジェナが言葉を発したのは一週間前のことだった。技をくらわせてから一週間経った日のことだ。龍勝はジェナがちゃんと命令通り動くか試してみるために、座っているジェナに「立て」と言うと「嫌」と言葉を発したのだ。 ――『心の迷宮』にちゃんと堕ちなかったのか?いや、現に堕ちたから瞳に色はないし、顔も無表情だ。じゃあなぜ言葉を発するし、こうして襲ってくるんだ?
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