思い

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「彼女の亡骸を抱きしめて泣いた。そして・・・オレはその場にいた奴らと父を殺した。悲しみのあまり解放された力を使って。何だか矛盾している。彼女が殺されなければ、オレの力は解放することなく、今頃朽ち果てていただろう。彼女がいなければ、今の自分はどこにもいなかったのだから。」  龍勝は後ろを向いた。 「・・・オマエもオレと同じだ。結局大切な人を守れなかったことには変わらない。オレも愛していた人を失った。オレ達は二度と、誰かを守ることなんて出来ない。たとえ傷つけることは出来ても、もう一度、誰かを愛することなんて到底出来ないさ。初めて自分以外を本気で愛した人を、忘れることなんて出来ない」 「二千年の間、他に好きになった奴はいなかったのか?」 「好きになった奴はいた。だが、その人ほど愛してやることは出来なかった。当時付き合っていた奴には悪いと思っている。オレが愛した人は抱くことは叶わなかったが、最高の女だった」  知らない間に涙声になっていた。 「泣いているのか?」  そう言われて 「別に」 とは言ったものの、右目から血の涙が流れているのに気が付いた。
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