嘆きの讃美歌

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 レイラとマキが帰ったのを確認したシスターは教会の扉に鍵をかけた。 「今日来るって知っていたのか、シスター」  聞きなれた声。後ろを向いていても分かる。30年前、始めて会ったときから、かわいそうな子どもだと思っていた。無論、そのときに龍勝の身体に龍が憑いていることも分かった。  あのとき、龍勝は椅子に座って漠然とステンドグラスを眺めていた。 「人間の命は、どうしてこんなにもあっけないものなんだろうか。あれのように、美しく輝きを放つのに、壊れるときは一瞬で壊れてしまう」  ステンドグラスを人間の命に例えて話すこの少年を、なぜか放っておけなかった。  ――時間の枠から外れてしまったため、大人にも子どもにもなれない永遠の少年。 「ええ。そんな気がしていました。龍勝」  後ろを振り返ると、いつからいたのか、祭壇のところに龍勝が立っていた。祭壇の後ろの壁のステンドグラスから差し込む夕日が、龍勝を照らしていた。その容姿だけでも美しいのに、夕日がさらに美しさを引き立たせ、赤と青の瞳が宝石のように輝いているように見えた。しかし、その瞳の色もまた、人あらざる者の証でもあった 「あなたがたを、天上界に入れさせるわけにはいきません。そのためにわざわざ法を破って持ってきました。ひとつあれば十分でしょう?」
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