嘆きの讃美歌

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「シスターに訊きたいことがあります。なぜ、7年に一度しか試験が開始されず、一人しか合格させないのか。教えてくれますね?」  龍勝は訊いた。シスターと話せるのは今日で最期だ。何度か見てきたこの試験の、本当の目的を知っておかねばと思った。 「そもそもこの試験はエンジェル・スレイがエンジェル・フレイになるための昇格試験ということになってはいますが、実際は全く関係ありません。7年に一度必ず生まれる堕天使の力を持つエンジェルのための試験なのです。堕天使は実は2種類あります。1つはエンジェルを殺した者が堕天使になる場合です。この堕天使たちはその後自分が死ぬ時までずっと天上界をさまよい続け、自分の罪を悔い改め続けます。この場合は試験は受けさせません」 「じゃあ、もうひとつの理由は何です?」  龍勝が訊いた。 「それは、『光華』の影響を受け、堕天使になってしまった場合です」 「それはどういうことですか?」 「『光華』はエンジェルにとっては身体的にも影響を与えるほど強い力があります。エンジェルの中には無意識のうちに、『光華』の力を吸収してしまう者もいます。そのエンジェルから生まれた子どもは、より強く力を吸収することができます。しかし、あまりにも吸収し過ぎると、堕天使と同じ姿になってしまうのです」 「それで、ジェナのあの堕天使の姿は―」 「はい。『光華』は天上界の宝ではありますが、同時に毒なのです。あまりにも『光華』が増えすぎると、天上界は崩壊してしまいます。天上界のバランスを守るために―」 「ジェナに、『光華』を吸収させたんですね?」
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