嘆きの讃美歌

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「・・・そうです。20数年前、『光華』の異常増殖のときに・・・それ以外にも、約10年おきにエンジェルを無理やり堕天使にさせてしまいました。本来なら、この役目は私がすべきことです。ですが、私には、『光華』を吸収する力がありません。そのために、私は多くのエンジェルたちを―この試験は天上界のために犠牲になった堕天使たちの救済のための試験なのです。 普段は私の力で堕天使の力を封じることができますが、どうしても封印は7年ほど経つと弱くなる。それに、人間界では堕天使の力は10分の1ほどしか発揮されません。なので、7年に一度、人間界で試験を行うようになったのです」 「試験の意味は何です?救済が目的ならば、試験の必要はないはずでしょう?」 「これは、他のエンジェルには昇格試験として伝わっています。一部の堕天使のみの救済のためのものだと知られれば、混乱が発生するでしょう。それに、天上界のために堕天使にさせられたエンジェルの存在を知っているのはごくわずかです。ジェナのことでもそう、姉のシェインはジェナが堕天使になった理由も、堕天使であることすら知りません」 「試験はあくまでカモフラージュということですか。では、1人しか合格させなかったというのは?」 「この試験では、最終的に合格かどうかを決めるのは、天上界に帰れたら合格ということにしています」 「帰れたらというのはどういうことですか?」 「試験は必ず二人で受けさせ、一方は普通の天使、一方は堕天使です。もちろん、堕天使はちゃんとエンジェルに戻します。今回の試験課題が『人間について』となっていますが、これはべつに何でもいいのです。この試験の最終合否判定は、帰り道にあります」
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