本編

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 その捉えどころのない雰囲気は、一般的な常人を寄せ付けない独特の空気を醸し出している、とよく評される。  昔からオカルト的要素の含まれる事象が大好きで、よく奇妙な行動を一人起こしては周りから不審な目で見られる時も、しばしば。  話し相手は、談子の前の席に座り、談子をからかいつつも、内面では変な性格を直してほしいなと密かに願をかけている友人、名残(なごり)由喜(ゆき)だ。  小学校時代からの談子の親友であり、いちおう世間からは、捉えどころのない談子の善き理解者として知られている。男子生徒も顔負けの長身。短く切った茶髪が、明るく活発な性格を、よく表現している。  暇な時には談子をからかって遊ぶのが趣味の、「大人っぽいけど子供っぽい子」と印象付けられやすい少女だ。  今もまた由喜は、何の信憑性もない噂話を拾ってきて、熱演する談子を、軽く流しながら暇を潰している。  ▲ ▲ ▲  二人が通う、東京のちょっと田舎にある、仁鳴(じんめい)高校。  この学校には、はるか昔に封印された鬼が眠っているという。  その噂は、入学当時から、どこからともなく流れてきた。この仁鳴高校伝統の昔話で、根拠も証拠もないのに、長い間語り継がれて消えることがない。     
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